
斎藤:なるほど。さて日本人のザルツブルグ音楽大学の指揮科といえば、あのカラヤンの後輩となる訳ですが、受験や授業はいかがですか?
中島:棒がふれて音楽が出来る人を通年1、2名くらいしかとらないけれど、僕が受けた年は色々あって若干多めに取るかもしれないと聞き、思い切って受験したんです。ピアノが弱くてもいけるかも?と思って。
先生にも相談し、無調のシェーンベルクはハッタリがきくと思って、ピアノはシェーンベルクを。フルートはモーツァルトのコンツェルトを用意したけど、結局吹かないで終っちゃって…こんなんでいいのかな?と思ったけど運良く受かって。
今学期はバーンスタインの作曲したものが課題で、好きだけど出版譜が無いものだったりして譜面を読むのに時間がかかる。ピアノが得意でないのにコレぺティ(オペラ伴奏)の授業を取らなきゃいけないし、副科のピアノに、1日3時間の指揮のグループレッスンが週4日、それにドイツ語と…という感じですね。早起きして一生懸命レッスンの勉強をしています。
斎藤:そういえば以前小澤征爾さんの指揮レッスンのドキュメンタリーを見たことがあります。「スパゲッティがのびたような指揮をしないで…」なんていう小澤さんの一言で少し緊張していた生徒たちがドッと笑いが起こり、空気が変わった。あれは小澤さんのユーモアいっぱいの面白い表現が詰まった面白い番組でしたが、指揮者って表現力は勿論オケを和ませるユーモアも必要なんだ、と思った瞬間でした。他に指揮者にとって必要なことは何でしょう。
中島:そうですね、総合的な人間力が問われると思いますね。下手したら音楽の能力よりもね(笑)。
斎藤:プライベートはいかがですか?
中島:今日本人の指揮科の友人とシェアして暮らしています。スコアの話をしたり、小さい街だから日本人が集まって来て、家で皆で食事をしてることが多いですね。鉄板焼きパーティとかね。
斎藤:ヨーロッパは建物が美しいですが、東大大学院では建築学専攻でいらっしゃいましたから、今建築という角度でも刺激的ではないのでしょうか?
中島:そうですね、でも大学は早稲田でしたが、一番建築が芸術に近そうだと思って入ったんですよ。みんな美大生のように絵が上手くてね。あ、僕のように下手な人もいっぱいいたか(笑)。また、東大の大学院では建築の環境工学の中に音響があって、そこにいたんです。
斎藤:そうですか。色々な角度から音楽を学ばれていますが、目標とする指揮者などいらっしゃいますか?
中島:目標かどうかわからないけど、好きなのはスタニスラフ・スクロバチェフスキーさん。読売日響の常任指揮者ですが、感覚が近いというか、音の粒が生き生きしていて、80代なんですがとにかく若々しくて。ベートーヴェンのシンフォニーなんてテンポも速くてね。内声部がよく聞こえて、裏でこんなことしていたんだ!と発見もある。しかもそれが効果的で面白い。
斎藤:では最後にこれからのテーマや目標をお聞かせください。
中島:いかにお客さんに楽しんでもらえるか、ニュートラルに聴いてもらえるかがテーマですね。客席とキャッチボールし一体となるために自分は魔法使いのようになれたらと思います(笑)また、どうやって世の中の役に立てるかと考えています。オケの迫力を気軽に聴いてもらえる環境を作り、それによって「明日も頑張ろう」と思ってもらえるように・・・。
そして自分自身もなるべくニュートラルに生きるのが目標ですね。
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指揮者
中島 章博 (なかじま あきひろ)
1981年、フランス、パリ生まれ。早稲田大学理工学部、東京大学工学系研究科修士課程卒業。東京大学工学系研究科博士課程へ進学。2007年10月よりオーストリア共和国ザルツブルク・モーツァルテウム大学指揮科に在籍。
指揮をクルト・レーデル、デニス・ラッセル・デイヴィス、杉山直樹、ホルヘ・ロッター、シメオン・ピロンコフの各氏に、フルートを湯川和雄、岩佐和弘の両氏に師事。
2006年以降、リトアニア・カウナス交響楽団、チェコ国立モラヴィア・フィルハーモニー管弦楽団、ブルガリアクラシックFMオーケストラ、ザルツブルク・モーツァルテウム大学交響楽団等を指揮している。また、2006年11月マレーシア(ペナン州)で行われた早稲田の杜金管合奏団の演奏旅行に指揮者として参加し、成功に導いた。この演奏旅行の成功により、以後毎年マレーシアにて演奏会を行う。
現在、ザルツブルクにて研鑽を積む一方、帰国時にはアマチュアオーケストラやアンサンブルの指揮者、トレーナーとしても活躍している。

「出る杭は引っこ抜け」「単純なものほど複雑なことはない」「自分自身にプラスにならない経験はない」など色々あります。
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スタニスラフ・スクロバチェフスキー指揮/
この指揮者は長年ザールブルッケンのオケを振っていたので、ここのオケとの相性はすごく好きです。機会があればCDを聞いてみてください。
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公式サイト
http://www.a-nakajima.com/(外部リンク)
Iris Philharmonic Orchestra
http://iris-phil.com/(外部リンク)